エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~

「そういえばアレ買った?」

 缶コーヒーを一口飲むと三雲がにやにやした笑顔を浮かべて俺を見てくる。

 アレとはなんだと考えながら缶コーヒーに口をつけて、ああアレか、と思い出した。ごくごくとコーヒーを喉に流し込んでから答える。


「三雲が教えてくれた結婚情報雑誌のことか。それならさっそく今朝購入して彼女に見せた」


 そういえば呼び出されて慌てて帰ったので、婚姻届と一緒に千菜の家に置いてきてしまった。一緒に見ようと思っていたのに残念だ。

 でも、千菜のために買ったものでもあるので、まずは千菜が目を通して結婚式や新婚生活についてのイメージを膨らませてもらいたい。


「それにしても驚いたな。女に一切興味がなさそうな郡司が突然、結婚するなんて言うから。まさか、女性にモテモテのこの俺よりも先に結婚するとはねぇ」

「俺も自分がこんなに早く結婚することになるとは思わなかった」
 

 むかしから結婚願望は低かった。それよりも医師としての知識と技術を身に着けるのが最優先。

 想いを伝えられて何人かの女性と付き合ったが、彼女の存在をないがしろにしてしまう俺はいつもすぐに振られてしまう。でも別に気にならなかった。

 そんなことよりも俺は脳外科医として早く一人前になりたい。

 脳の病気で大切な人を亡くして悲しんで泣いていた彼女のためにも――。

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