エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~

「千菜。ちょっといいか」


 不安そうに中澤さんの背中をさすり続けている千菜を押し退けるようにして、俺は中澤さんのそばに寄る。


「すみません。ちょっと触ります」


 さきほどからいくつか気になる症状が見られたため、中澤さんに声を掛けながら身体の状態などを確認していく。

 すると、やはり言葉をうまく喋れなくなっていることと、左半身に力が入らなくなっているようだ。

 それらから察するにおそらく――


「千菜。すぐに救急車を呼ぶんだ」


 そう声を掛けるけれど返事がない。ちらっと横目に千菜を見ると、動きが固まってしまっている。その表情は青白く、胸の前できつく握っている両手が小刻みに震えていた。

 もしかして、また祖母のときのことを思い出してしまったのだろうか。


「救急車ですね。私が呼んできます」


 すると、千菜の同僚の女性――小谷さんが声を上げて、カウンターの奥へと駆けていく。


「中澤さん。少し横になりましょうか」


 座っているのが辛そうだったので、力の入っていない左側を上にしてゆっくりと寝かせる。

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