蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜



慌ててジッパーを首元まで引き上げる
カーッと熱くなる頬は暑さの所為ではなくて


「フフ」


琴ちゃんに笑われた


浅瀬に女子五人で浮き輪を持って座り込む絵面は

宛らいつもの女子会のようで

ニコニコ笑って三人の話を聞いていた瑛美ちゃんは


「多分ですけど、私はこちら側」


そう言うと琴ちゃんと優羽ちゃん側へ移動した


残されたまるちぃと私は顔を見合わせた


「え?どういうこと?」


対面することになった三人は


「あ〜、瑛美、そういうことね」


何やら含み笑い顔


「え?どうしたの?みんな」


「私たち、“まだ”だから」


そう言った優羽ちゃんに頭を傾げてしまった


「・・・っ」


まるちぃは意味が分かったようで
「やだー」なんて両手で頬を挟んだ


「え?なに?」

益々わからない鈍感な私は
優羽ちゃんの言葉で更に真っ赤になった


「私たち三人は未だキス止まりだから」


「・・・っ」


部屋割りの時に大ちゃんから聞いたはずなのに
自ら墓穴を掘ってしまった


・・・・・・って


「琴、ちゃん、も?」


確か理樹さんとは一年生の頃から一緒に住んでいると聞いた


「・・・うん。まだ勇気が出ないの」


肩をすくめた琴ちゃん


・・・そっか


私は叶わないと諦めていた大ちゃんとの初めてが嬉しくて
勇気より“幸せ”な気持ちが勝っていた


人の数だけ、それぞれの想いがあって
ひとつも同じじゃないことを思う


「てか、もうギブなんだけど」


優羽ちゃんが立ち上がり
合わせて琴ちゃんも「ギブ」と手をあげた


「着替えて涼しいところで女子会」


まるちぃの声にみんなで賛成して
少し浸かっただけの海水浴が終わった




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