蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜


「あの人は“目”ごときがって軽んじたかもしれないけれど
ニノ組は目の働きがないとやっていけない程重要な役よ
だから『お前ごときが』なんて言葉
今すぐ此処で撤回させてやりたい」


そう言ってまた眉間に皺を寄せた飛鳥さんから怒りが見えた


「“相応しい相手”はあの人ごときに語られなくないわ
だって全くの他人なんだから」


飛鳥さんの言葉が勢いを増す


「それに、あの日大和を呼んだのは
あの人のちんちくりんな娘が一眼会いたいってギャーギャー喚くから
仕方なく大和に来てもらっただけで
それに手こずっている間に蓮ちゃんは誠さんが連れて帰ってるし
ほんと散々だったんだから」


・・・?あの日の祖父のお迎えは
最初から決まっていたことなのだろうか?


「あの日ね、誠さんから蓮ちゃんに用事があるから“四時には迎えに行きます”って連絡がきてたの」


「そうだったんですね」


ひとつひとつ明かされる真実は
十二歳の自分が勝手な解釈をしたこととかけ離れていた


「あの騒ぎに乗じて屋敷を抜け出して
蓮ちゃんに庭で会ったのね
あの人のやりそうなことよ、だって
大和の大切な相手は白夜会では“蓮ちゃん”って周知の事実だったもの」


「え?」


「本当は幼稚園の頃に許婚だと通達を出したかったんだけど
誠さんに“蓮が十五歳になるまで待って”と言われていたから」


「・・・」


「十五歳になったところで
蓮ちゃんの気持ちが変わらなければ
大和の婚約者として正式に発表するつもりだったの」



初めて聞く話に頭がついていかない

処理能力を超えた展開に

今日はこれ以上、飛鳥さんとは居られないと心が悲鳴をあげた





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