蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜



「大和、今日の予定は?」


三人になった幹部室でタブレットを使っていた俺に亜樹は壁の時計を見ながら口を開いた


「・・・駅前へ、行くつもり、かな」


迷いの先が言葉を途切れさせる


「あぁ、そうか、蓮か」


「あぁ」


「ん?蓮って?あの蓮か?」


突然永遠が会話に入ってきた


「あぁ、あの蓮な」


「お前ら別れたんじゃねぇの?」


痛いところを突かれて返事を躊躇う


「色々あんだよ」


亜樹が先に誤魔化してくれたから



「そうか。ま、精々頑張れ」


リア充野郎の永遠は“他は興味ない”とばかりに携帯を触り始めた


「んで、調べはついたのか?」


「あの頃以上には出てこないんだ
屋敷のカメラもコタの小屋の辺りだけは死角になっていて
何があったのか調べようもねぇ
だから、本人に直接聞くことにした
六年も待ったんだ、もう良いだろ」


「他に好きな奴がいたら?」


「奪い返すまで」


「クッ、そうかよ」


「あぁ」


「お前も実るといいな」


「サンキュ」


人とは思えない程冷たい人間だった亜樹は
東白へ入学する前に組長である親父さんが再婚をしたことで
新たに同い年の妹ができた
その、同い年で同じ誕生日の“琴ちゃん”が来てから見違えるほど人間らしくなった

その琴ちゃんの友達の内田優羽《うちだゆう》が亜樹の彼女で

去年一年間、口説き続け
今年のバレンタインに放送室をジャックして公開告白の末
OKを貰うという大胆な男にもなった

そして・・・


その亜樹も永遠も口にした“蓮”は
俺がずっと恋焦がれる相手山之内蓮《やまのうちれん》


幼稚園から毎日毎日一緒にいて
片時も離れたことはなかったのに

六年生になったある日

蓮は熱を出して三日学校を休んだあと
手の平を返したように俺を避け始めた

いつもと同じように俺の家に遊びに来ていた三日前

いつもと違うことが起こったことを

避けられるまで気づけなかったんだ









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