蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜


「で、蓮の荷物な?」


さっきの声が幻のように
トーンが上がった大ちゃんは


「こっち」とベッドルームに併設されている
ウォークインクローゼットへと手を引いた


「・・・え」


六年前までは隠れんぼをしていたクローゼットは少し拡張されていて

大ちゃんの服や鞄、帽子が並んでいる

その一角に


「なんで?」


東美の寮に置いていた荷物と洋服が並べられていた


「東美から全部引き上げてきた」


「・・・?」


「蓮は回復したら東白へ転校な」


「ほんと?」


「あぁ」


「嘘みたい」


「俺に出来ないことはないよ」


自信たっぷりの大ちゃんの顔を見ながら
ふと頭を過った言葉が口から出た


「私の荷物が何で全部大ちゃんの部屋に?」


「それは」


「それは?」


「死ぬまで此処で一緒に暮らすから」


「・・・・・・は?」


急な展開が多すぎて処理能力を超えた

ぺたんと床に座り込んだ私に
同じように屈んだ大ちゃんが視線を合わせて


「誠さんの許可も貰ったし」


向日葵みたいな笑顔を見せた


・・・・・・あ、この笑顔好き


・・・じゃないっ


「おじいちゃんの許可?」


「あぁ、結婚したいって言った」


「・・・結婚?」


「そうだよ?俺は蓮としか結婚しないし
蓮も同じだと思ったけど、蓮は違うの?」


「・・・違、わないよ」


「だろ?じゃあ、もう一緒に居るしかない」


「・・・」


それはそれは嬉しそうな大ちゃんの様子に


なんだか・・・色々、諦めた




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