無名ファイル1

Part3.ホタルの輝き


『ガチャッ!!!』

「はぁっ…はっ…はーっ」

見渡す限り本棚…目当ての相手は…。

人の気配はなく、無人の様だった。

冷房の風に火照った体が包まれる。

「いない…帰っちゃったのかな」

それとも、意図的に逃げられた?

せっかくエミリアが教えてくれたのに。

『ブーッ…ブーッ…ブーッ』

「え…はい、もしもし…」

鼓膜を揺らす穏やかな人の声…。

「見学?…分かりました」

『プツッ…ツゥーッ、ツゥーッ、ツゥーッ』

急なお誘い…一体どうしたんだろう。

「でも、丁度良いかもしれない。」

私は携帯をしまうと帰路についた。

「あらぁ!おかえりなさい、魅香!
あのサドってやつブン殴ったぁ?」

庭の水やりをしていた百合ネェが、

キラキラ笑顔で私を出迎える…。

さっきまでもやもやしてた感情も、

どきどきしてた心臓もスッと安定する。

「百合ネェ!!捻り上げてやったよ!」

「えぇ、ちょっとぬるくなぁい??」

ぬるくないよ…ピアニストの手は、

命よりも大切な物なんだから…。

それを二度と使えなくなるかもって、

冗談でも言われたらトラウマだよ。

「ほぼ解決!!」
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