無名ファイル1

「雨は降ってるけどお土産は、
今から見に行きたいんだけど…」

「いいよ、別に急いでないからな。」

割としっかり大粒の雨が降っている。

今日はロングスカートにしないで、

ミニスカートに分厚いタイツで正解。

ロングスカートは歩くたび揺れて、

雨粒を全て吸い上げるからね。

「あれ、ねぇ…」

「え?」

しゃがみこんでいる女の子がいた。

屋根がある場所ではあるが、

ボブの毛先から水滴が滴る程には、

濡れてしまっていた…。

「こんなところでどうしたの?
お父さんとお母さんはとはぐれた?」

俯いていた女の子が顔を上げる…。

わ、紫の瞳…泣いていたからか、

宝石のようにキラキラ輝いている。

女の子は何も言わずに私に抱き着いた。

年齢は二歳くらいだろうか…。

「…ママ」

私と蛍は顔を合わせて困り果てた。

こういう場合は何か安心させるため、

上手いことをいうべきだろうが、

生憎二人して口下手で子供の扱いは、

さっぱり分からない…。

「えーっと、ママはどんな人?」

「…ひ”ぅぅっ…ママァ」

女の子は泣きながら私を指さす。

…混乱しているのだろうか。
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