無名ファイル1
『…ピピピピッ…ピピピピッ…ピピピピッ…』
女がカッと目を見開き、飛び起きた…。
ベッドの上でじっとり汗ばむ首筋を拭う。
辺りを見回すと深い溜息をついて蹲った。
艶やかな銀髪が肩を滑り白いマットレスに
サラサラと落ちる…女の肩は震えていた。
「ヒュッ…ヒュッ…スーッ…ハッ…ケホケホッ」
女はチラッとカレンダーに目を向け、
気だるげにベッドから立ち上がった。
部屋は二階…階段を下りて洗面所へ。
ばしゃばしゃと冷水で顔を洗った女は、
柔らかいタオルでサッと顔を拭いた後、
深く息を吸い、目を瞑って言葉を紡いだ。
「私は…前向きで底抜けに明るい性格。
自分の意思に忠実に生きる、月乃魅香。
今日も1日鮮やかに彩って魅せろ!!」
女が頬を包んでいた両手で勢い良く叩く。
すると鏡の向こうに別人かと疑う程に、
生気に満ちた瞳と華やかな笑顔のあたし。
勿論鏡は真実を写す普通の鏡。
あたしは長い髪を一つのお団子に結って、
前髪と後れ毛を丁寧にコテで巻いた。
「よ~しっ!上手くできた!!」
お団子にお気に入りの簪を挿す。
パールと月のパーツがシャラリと揺れた。