無名ファイル1

『キーンコーンカーンコーン』

チャイムの音にハッと目覚めた。

「あたし…寝てた?」

…夢を見なかったのか、いつぶりだろう。

こんな穏やかな目覚めを迎えたのは。

「んん…。」

び…っくりしたぁ!!彼と繋がる左手。

温かい…もうすっかり同じ温度だ。

「寝て…る??」

あたしの膝の上に頭を乗せて、

スヤスヤと寝息をたてる天使…。

「整ってるなぁ…」

すべすべの頬を撫でながらポツリ。

その時、ベッドを囲っていたカーテンが、

シャッと音をたてて開かれる。

「きゃあっ!!」

二人だけの空間だと思っていたあたしは、

驚いてその人に枕を投げつけた。

「ぶふっ!!………随分元気ねぇ?」

「えっ…」

その人は…怒り心頭であたしに微笑む。

あ、やばい、養護教諭のお色気先生!!

ウェーブのかかった長い黒髪に、

真っ赤なリップが似合う大人な女性。

超美人だけど、超怖いって有名。

「あらぁ、この子はホタル君じゃないの。
月乃サァン…もしかして逢い引き?」

「ち、ちが、違います!夏夜起きて!!」

あたし保健委員だから!やばいって!!

やばいってぇぇえっ!!
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