無名ファイル1

Part3.照らされる悪夢


『今日もツギハギパークにご来場頂き、
誠にありがとうございました。
悲しみはパークで大切にお預かりします、
幸せは大切にお持ち帰りください。』

ゲートを通り、遊園地を出たあたし達。

どぎまぎしたまま、手を繋いでいる。

気を抜いたら顔がにやけてしまう…!

携帯で交通情報を確認して駅まで歩く。

まだ少し夢見心地な気分…。

「ん?」

駅が見え、異常な人だかりに気がつく。

ホームが人で埋め尽くされている…。

微かにアナウンスが聞こえた。

「…原因不明の列車火災だって」

運転見合せでいつ再開するか未定、

バスやタクシーも長蛇の列…。

「何故今日に限って…。」

蛍は携帯を見てわなわなと震える。

うーん…今日中に帰れるかなぁ…。

「近くのビジネスホテルに泊まって、
明日の朝帰る方が賢い選択かもな…。」

「…うん!少し歩いてみよっ!!」

実は少し嬉しかった…まだ蛍と一緒に、

いられるから。ずるいね…あたし。

『申し訳ありません、既に満室で…。』

エントランスの女性が頭を下げる。

「ここもか…。」

運転見合わせの影響で満室が多発。

二人は頭を抱えた…。
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