御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
「私がここへお伺いした本来の目的は、あなたが蓮様にそう伝えるのを見届け、旦那様にご報告を差し上げるためです。それが私の役目なので……」

なんの温度も感じない口調は冷ややかだ。たぶん、緒方さんはここにいる間に蓮さんから連絡があるとわかっていたのだろう。

だからこのタイミングでうちに来たんだ。

そういえば、今朝、蓮さんから送ってもらったときアパートの前で感じた視線……まさか緒方さんだった、とか?

たとえ、それが緒方さんだったとしてもいまさら確認したってどうしようもない。

「あなたと一緒にいては、蓮様は幸せになるどころか、有栖川家に泥を塗ることになります。それでもいいのですか?」

緒方さんに言われて、ハッと目が覚めるような気がした。まるで甘い幸せの夢が弾けるみたいに。

私といたら、幸せになれない……?

自分の気持ちを優先させれば、きっと婚約者の人も悲しい思いをする。蓮さんの幸せを奪うことは……私にはできないし、そんな資格もない。
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