翳踏み【完】
「誰かのって、誰の?」

「ええ、決まってない、ですけど……」

「じゃあ俺で良いじゃん」

「えっ」

「嫌? 俺は菜月が俺以外と2ケツするとこ、想像したくないんだけど」


絶対に言ってくれなさそうな言葉だと思っていたのに、当たり前のように呟かれて胸がいっぱいになる。すきだ、すきすぎて壊れてしまいそうだ。どうしてこんなにも私の欲しい言葉ばかり言えてしまうのだろう。


「菜月」

「は、い」

「今度乗せてやるから、ぜってぇ俺以外の後ろ、乗んないでね。一人でとか、ますます無理だから」

「先輩」

「返事は?」

「……は、い」


返事を返したら、先輩は「イイコ」と呟いて笑った。またさっきと同じように唇を奪われて、白いカッターシャツにしがみつく。もう、嘘でもいいと思った。


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