大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
父と直接やり取りする機会はないが、泰子や貫一からはよくふみが届く。

父は毎日、仕事に勤勉に取り組んでいるようだし、ふたりはそれぞれ学校に楽しく通っているようで安心している。
それも全部敏正さんのおかげだ。


「今度会いに行こうかしら」


ふたりの顔を思い浮かべて、そんなことを考えていた。


ビルヂングを一周したあとは、日本橋の百貨店へ。
富裕層の奥さまたちが楽しそうに行き来している。

そんな中、私は懇意にしている洋服売り場に一直線。

この売り場には敏正さんの寸法の記録があり、いつも背広やシャツを作ってもらっているのだ。


「津田さま、いらっしゃいませ」


店先で丁寧に出迎えられて気圧される。

店内に足を踏み入れたら逃がさないというような雰囲気が、私は少し苦手なのだ。

< 251 / 338 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop