大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
「次に身請けだ。遊女に入れあげた男が大金をはたいて、女を引き取ることを言う。この身請けを待ち望んでいる遊女は数知れない。しかし、幸福な例ばかりではないのだ。身請け相手を自分で決めることはできない。場合によっては一生嫌いな男のご機嫌を取りながら妾(めかけ)として生きていかねばならぬこともある」


一生……。そんなの、嫌だ。
なんのために生まれてきたのかわからない。


「身請けされたものの心に決めた男、いわゆる間夫(まぶ)への思いが断ち切れず、大金を出した男の逆鱗に触れて殺された事件もある」

「殺され……」


思いがけず殺伐とした言葉が出てきて、背筋が凍る。


「あぁ。身請けが決まって喜ぶ者もいるが、反面、嫌で自死する者もいるのが現実だ」


吉原の闇の部分をはっきりと突きつけられて、目が泳ぐ。

地獄であるとわかっていたはずなのに、息が苦しいほど心臓が暴れだした。


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