キミだけのヒーロー
試合は思いのほか接戦だった。

相手チームは格下のオレら相手に油断してたんだろう。

試合が始まってすぐにオレはシュートを決めた。

その後、相手チームも２点入れて現在２－１。

オレ達が１点差で負けている状態で、後半のロスタイムに突入した。


時間は残すところあとわずかだ……。

だけど可能性がないわけじゃない。

最後まで諦めたくない。

もう１点……絶対入れてみせる。


そう思ってはいるけど、さっきから相手チームがボールを握っていて、前線のオレの位置までなかなか届かない。


どうやら、相手はこのままボールをコントロールして試合終了へ持ち込もうとしているらしい。

俺らのチームはみんな疲れが足にきてフラフラな上、既に諦めのムードが漂っている。

でもオレは嫌だ。

絶対諦めない。


その時、ディフェンダーのシィが、相手ボールを奪った。

もうすぐ終了だと判断したんだろう。

彼はそのままドリブルしながら前線に上がってくる。

そして……一瞬オレの方に視線を送り、ロングパスを繰り出した。


シィらしい正確なパスは、オフサイドぎりぎりのオレが走りこむ位置にぴったりとはまった。

シィのフォローを無駄にするわけにはいかない。

絶対ゴールまで持ち込んでやる。

敵のディフェンダーを一人抜いた。

そしてもう一人……

足元につっこんできた敵を交わしながら、姿勢を崩してボールを蹴った。


入ってくれっ！



だけど、オレの願いもむなしく、ボールはゴールポストに当たり跳ね返ってきた。

その瞬間、試合の終わりを告げるホイッスルが鳴り響いた。

オレはただ立ちすくんで、入らなかったボールが虚しくバウンドしているのを眺めていた。


オレの初めての試合は負けに終わった。
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