キミだけのヒーロー
サユリが塀の上から落ちたのは明らかだ。

打ち所が悪かったのだろうか?


オレは慌ててサユリの近くに飛び降りた。

サユリの首筋に手を当てて脈をとり、それから呼吸を確認する。


良かった。

無事だ……。


サユリの頬にそっと触れた。

白い肌に血色の良い唇。

無数のクローバーが彼女の体を縁取っていた。

まるで昔絵本で読んだ、毒リンゴを食べて眠ってしまった白雪姫のように見えた。


その瞬間、また不安に襲われる。

ひょっとしてこのまま目を覚まさなかったらどうしよう……。

北野典子のように……。


いやだ。

オレまだ何も伝えてない。

謝ってもいない。

サユリに言いたいことがたくさんあるんだ。

目、覚ましてくれよ。

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