キミだけのヒーロー
四葉のクローバー
オレはサユリの名前を何度も呼び続けた。


何度目かの呼びかけの後、サユリの瞼がゆっくりと動き出した。


「おい! 大丈夫か?」


「ケンジ……」


サユリの口から漏れたその言葉にホッとして、オレの涙腺は一気に緩んだ。


「もぉ……心配かけんなよ」


オレは涙に気づかれないようにそっと目じりを拭った。


「ごめんね……」


サユリがゆっくりと体を起こす。


「なぁ? ほんまにこれ乗り越えたん?」


オレは後ろの塀を指差した。


サユリは恥ずかしそうに頷く。


「うん。子供の頃、ここが遊び場やってん。よくこっそり忍び込んでた。でも久々に登ったから、降りるの失敗しちゃった」


「はぁ……」と大きなため息をつくとポリポリと首の後ろを掻いた。


「サユリの子供時代がなんとなく想像できるわ」


そして本当に想像して思わず吹き出してしまった。


「もぉ。そんなに笑うことないやん」


サユリは口を尖らせて拗ねている。
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