キミだけのヒーロー
「ん――。悪いっ。投げて」

そう言って、サトシは手をこちらに差し出す。


オレはフッと小さなため息を漏らして、サトシの携帯を手に取り放り投げた。


「サンキュ」


そう言って、サトシは携帯の表の小さな画面で着信相手を確認する。

そして大きくため息をついたと思ったら、電話に出る事もなく切ってしまった。


「出えへんの?」


「ああ。ちょっとわけありでな」


「ふーん」


オレは鞄を手に立ち上がった。


「用事思い出したから帰るわ」


そう呟いて部屋を出た。




「あれ? 帰るん?」


玄関先で、両手にグラスを持ったシィに声をかけられた。


「うん。ごめん。用事思い出してん」


オレは逃げるように玄関ドアをすり抜けていった。


「おい! CDは?」


ドアが閉まる瞬間、シィの声が聞こえた気がしたが、無視した。

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