明日が見えたなら  山吹色


金曜日に彰くんは職場の暑気払いでほろ酔いで帰宅した。

「おかえりなさい」出迎えると

「ただいまー」とハグされ沢山キスもされた。

 機嫌も良く随分と美味いお酒だったのだろう。酔った時の彰くんはいつもより甘くなる…………

 そして手を引かれ浴室へ向う。

「私、お風呂入ったよ」

「オレはまだだよ」

「うん、だからリビングへ行ってるね」

「七海はここに居るんだから入るんだよ」

 ‘’拉致だ!‘’彰くんに脱がされて一緒にお風呂に入った。

 週末は二人の時間を過ごせて私の不安はうすれてた。


お盆休み初日は、彰くんの実家への手土産を買ったり、スーパーへ行った。最近ふっと感じる彰くんの違和感なんだろ?

翌日はお墓参りと彰くんの実家へ寄り、お昼をご馳走になった。たまにしか顔を出せず申し訳ないが、いつも歓迎してくれる。

3日目は大型ショッピングモールへ行き、彰くんはスポーツ店、私は手芸店に別れて、買い物が終わったら連絡を取り合うことにする。合流してからは一緒に観てまわった。混雑が酷いが急ぐ訳でもないので、気になるお店に立ち寄った。

最後の日は家で過ごす。

「今日は随分と根を詰めてたな?何を作ってるんだ?」

「みくちゃんにプレゼントするぬいぐるみ作ってたの」席を立ち彰くんに見せる。

 みくちゃんとは親友綾乃の愛娘で1歳。七海と同期入社した綾乃は社内結婚をして出産を期に退社している。夫の福原拓馬は彰汰の高校の同級生だ。

  綿100%とサラッとした光沢のある生地で桜色のクマのぬいぐるみを作った。

「喜んでくれるといいな」

「うん!それでね 今週の水曜日に綾乃と会ってくるから外食して欲しいの、いい?」

「いいよ、久しぶりだろ?楽しんでこいよ」

「ありがとう」


 最近は彰くんのケータイが鳴らないので落ち着いて過ごせたのに!お盆明けからまた彰くんのケータイが鳴るようになる。

 一緒にいない間も鳴っているの?

 会っているの?

 不安と不信が少しずつ高まっていく。
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