ドキドキするだけの恋なんて

「でもさ。その雅代って人は あず美を 浮気相手って 思っていたんじゃない?」

芙由子が ハッとすることを言う。

「えっ!どういうこと…?」


私は 軽く動揺してしまう。

もう 4年も 前のことなのに。


「だってさ。タケル君は 誰かと付き合っても 別れると 雅代に 戻ってたんでしょ?だから 雅代は タケル君にとって 最後の女なわけじゃない?」

芙由子は 慣れ慣れしく ” 雅代 ” と 呼び捨てにして言う。

「最後の女とか フウちゃん 演歌みたい。」

さくらは 笑いながら 茶化したけど。


私は 今まで そんな風に 考えたことは なかった。


タケルは 雅代に戻る?

タケルにとって 雅代は 特別な存在?


私は 電気が走ったみたいな 衝撃を受けて…


「そっか…そうだね…」


「んっ?あず美 どうしたの?」

「私 馬鹿みたい…私が タケルと雅代さんを 邪魔したんじゃない?」


「何か…いるよね?そういう カップル。くっ付いたり 離れたりして。目障りだよね?」

「そうそう。案外 モテる子だと 回りは 期待するじゃない?別れたと思って。でも 結局 よりを戻すんだよね。」

「腐れ縁っていうのよ。あず美 巻き込まれない方が いいよ。」


3人の言葉に 私は 曖昧に頷く。


自分目線で 考えていたことも

視点を変えると 違って見える…


私は 雅代を 恨んだけど。

恨まれるべきは 私なのかもしれない。


無口になった私を 置き去りにして

3人は 職場の話しで 盛り上がっている。


切り替えよう…私も。

もう タケルから 気持ちを 離そう。


私は 小さく ため息をついた。






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