ドキドキするだけの恋なんて

上原さんのラインは 週に一回くらいの 頻度で。


内容も 軽い世間話しの合間に

ちょっとずつ プライベートを 交えて。


煩わしく 思わない代わりに

真意がわからない 物足りなさは あったけど。


今の私には その曖昧さが ちょうど良かった。




「もしもし!あず美 上原さんから 何か 言われた?」

合コンから 一月半が 過ぎた頃。


タケルは いつもと違う 強い口調で 

私に 問いかけた。


「別に…何も 言われてないけど?」

「連絡 取り合ってるの?」

「そんな事 タケルに言う必要 ある?」


私が 強く 言い返すと タケルは 口ごもる。


「上原さん あず美のこと 狙ってるって…」

「だから… それが タケルと 何か関係ある?」


上原さんが 私に 好意を持っていることで

タケルが 動揺していることが


私は 少し 嬉しかった。


どっちが 嬉しいの…?上原さん? タケル?


多分 両方…


上原さんのことは よく知らないし。

悪い感じは しなかったけど

特に 惹かれたわけでも ない…


でも 誰かが 私に 好意を持っているって

やっぱり 悪い気はしない。


「あず美は 慎重で 警戒心が強いから。ゆっくり 近付きたいって… 上原さんが 言ってたんだ。」

ボソッと 吐き出すように タケルが言う。


「へぇ… 私って そんな風に 見えるんだ。」

「全然 違うのにな。上原さん あず美のこと 買い被ってるよ。」


「だから!なんで タケルに そんなこと 言われなきゃなんないの!」


付き合っている頃 タケルは 私を 束縛しなかった。


お互い 就活やバイトで 忙しかったけど。

それを抜きにしても…


タケルは 束縛し合う恋愛は 苦手だと思っていたけど。

ヤキモチを妬いたり するんだ? 





 

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