私は彼とあくまでも友達になりたい
図書委員2回目
図書委員二回目。

五月の下旬だった。
蒸し暑くて、やってられない。

クーラーっていつからつくんだろ。

今日も生徒は私たち以外いない。
…と言いたいところだったが、何人か女子生徒がいた。多分、弥生くんのことが好きな女子なんだろうな、とぼんやり思う。

肝心の弥生くんは寝ていた。やっぱりまつ毛が長い綺麗な横顔だ。

疲れていたのかなあ。最近部活が始まったばっかりだし。

結局、弥生くんはバレー部に入ったと風の噂で聞いた。一年なのに、次の練習試合ベンチ入り確定らしい。

かくいう私は、なんだかんだ言いつつ、帰宅部になった。
帰宅部になったっていう表現は少し変かもしれないけど…。

運動部も気になったが、諦めた。
一瞬は、弥生くんに近づきたくてマネージャーも考えたけど、私は別に可愛くないからそれもやめた。女子のひがみは怖いしね。

そんなことを弥生くんを見ながら考えていると、カウンター越しに声をかけられた。

「この本借りたいんですけど。」

私は慌てて前を向く。
タイの色からして、先輩だ。

その先輩は茶髪の癖っ毛が可愛いと有名な弓道部の先輩だった。

でも、この人、なんか怖いな。
顔は笑ってるのに、目が笑ってないというか…。

「あ、はい、分かりました。」

私はマニュアル通りに仕事をこなす。

「ねえ、」

そんな私に先輩が話かけてきた。

「なんでしょうか?」

私は何気なく笑顔で聞くと、


「…弥生くんに手を出したら容赦しないから、ね。」


…背筋がゾっとする思いをした。
私は、なるべく、ビクっとしたのがバレないように、

「大丈夫ですよ。そういう風に弥生くんのこと思っていないんで。」

先輩は私がそう声を震わせながら言ったのを聞いて、初めて心の底から笑い(多分)、

「言質とったから。」


…弥生くんの隣に座るっていうのは危険なことなのだと知った。
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