あなたの左手、 私の右手。
「私たち家族の乗った車は、トラックの下敷きになって何時間も救出されなかったんです・・・」
先輩は神妙な顔をしながら話を聞いてくれている。

「その間に両親が・・・苦しみながら・・・呼吸が弱くなるのを・・・」
思い出してつらくなると、先輩はそっと私の手を握ってくれた。

まるで大丈夫と言ってくれているような気がする。

「私はずっと意識があったんです。両親が・・・亡くなる瞬間も・・・」

聞こえるサイレンの音。
たくさんの人の声。

倒れたトラックの車体を切断する音。

そんな中でも、両親の痛みに苦しむ声も、意識を失った後の呼吸音も、すべてが聞こえていた。
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