翠玉の監察医 癒えない時間
星夜のお気に入りだという展望台に連れて行ってもらった。青空と街を見つめる星夜の横顔が、蘭の頭には鮮明にある。この人を失いたくない、その一心で蘭は遊ばずに強くなるための特訓を重ねているのだ。

蘭は気付くことができなかった。星夜がどこか寂しげな目をしていたことを。何も知らないまま、蘭は星夜と同じ医大に入学することを選んだ。星夜と同じ監察医という道を歩きたいと思ったのだ。

「本当に俺と同じ道でいいの?」

学校からの帰り道、蘭は星夜と歩きながら医大に行きたいことを言った。すると星夜がそう返してきたのだ。

「私は、監察医には不適格でしょうか?」

蘭は首を傾げる。星夜は「そういうことじゃなくて!」と立ち止まって言った。

「蘭なら女優とかになってもおかしくないなって思ってたからこの道を進みたいって思うのが意外で……。本当に監察医になりたいの?」

蘭は星夜を見つめ、「はい」と迷わずに答える。そして胸元に触れながら言った。
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