プラチナー1st-

紗子、困惑する



翌朝、自席に着いた紗子は詩織にため息をつかれた。

「なんか島のみんなが盛り上がってると思ったら、紗子のことだったの…」

「人聞き悪いわ。私は巻き添えにされただけよ」

昨日のこの場所での一件を言われて、紗子は頬を膨らませてえる。それにしたって、と詩織が続けた。

「和久田くんが紗子狙いだったとは知らなかったわ。あの人ちょっと前に涌沢(わきさわ)さんに告白されてなかった?」

「えっ、そうなの!?」

涌沢はフロアで一番人気の女子社員だ。目がくりっと大きくてまつげもバサバサ。小さな口は口角がきゅっと上がっており、血色の良い頬はいつも健康的でつやつやしている。ファッションは可愛い感じのオフィスカジュアルで、メイクや洋服は明るい色のピンクやオレンジ系が多い。男から守ってあげたい、と思わせるような典型的なタイプで、それ故涌沢に浅からず想いを寄せている男子社員は多い。眼鏡で地味な紗子とは大違いだ。

そんな人からの告白を受けておいて、紗子に構うとはどういうことだ。和久田は見目もよく成績も優秀なんだから、早く涌沢とまとまってしまえば良いのに。

噂をすればなんとやら、和久田が通路からデザイン部に入って来た。此処はマーケティング部じゃありませんけど。そんな紗子の心の声は届かず、和久田はにこにこしながら紗子の席に近づいてくる。

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