死んだ彼が幽霊を成仏させてみせます!?
「続くわけないのにっ」


自分の考えの甘さに笑いそうになった。


相手は幽霊なんだ。


好きになったって意味はない。


結ばれるためには自分も死ぬしか道はない。


わかっているのに……。


「どうして好きになっちゃったんだろう……!」


辛くて苦しくて、嗚咽を漏らしながら泣いた。


厚彦は自分から離れられないということを忘れて、ひとりきりだと思って泣いた。


泣いて泣いて、やっと少し落ち着いてきたとき梓はそのことを思い出した。


厚彦の声は聞こえてこない。


けれど、個室の前で待っていることは確実だった。


(どうしよう、全部聞かれたよね!?)


途端に梓は赤面していた。


厚彦はきっと梓の気持ちに気がついただろう。


もしかしたら迷惑そうな顔をされるかもしれない。


それに、どんな顔をして厚彦に会えばいいのかもわからなかった。


でも、いつまでもここにいるワケにもいかないし……。
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