死んだ彼が幽霊を成仏させてみせます!?
厚彦の両親の前まで来たとき、梓はチラリと隣に立つ厚彦へ視線を向けた。


厚彦は無表情で2人を見つめていて、何を考えているのかわからなかった。


お辞儀とお焼香を済ませて列から離れようとした時、厚彦が木魚を叩くお坊さんの隣に立つのが見えた。


あんなところで一体なにをしてるんだろう?


厚彦の様子をぼんやりと眺めていると、突然お坊さんの頭をポクポクと手のひらでたたき始めた。


それは木魚に合わせたリズムで厚彦はノリノリだ。


その様子に思わず噴き出してしまいそうになり、慌てて両手で口を押さえた。


こんな場所で笑うなんて不謹慎すぎる。


だけど死んだ本人はケロッとしているし、お坊さんの頭を叩きながらこちらへ向けてピースサインをしている。


(勘弁してよ!)


梓は必死に笑いをこらえて、厚彦をお坊さんから引き離すためにその場を移動したのだった。
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