死んだ彼が幽霊を成仏させてみせます!?
☆☆☆

厚彦に言われるがまま、梓はグラウンドへ出た。


そこから校舎を見上げると、屋上のフェンスが見える。


でも、そこには誰の姿もない。


「誰もいないじゃん」


太陽の光がまぶしくて目を細める。


しかし、やはり誰もいない。


「あそこにいるだろ! 見えないのか?」


厚彦は必死に指をさす。


その指をたどって確認してみても、やはり梓には何も見えなかった。


まさか、また冗談を言っているんだろうか?


(あたしがさっき言いすぎたから、仕返ししてるとか?)


そう考えた梓はムッと頬をふくらませて厚彦を見た。


「あのね。あたしちゃんと謝るつもりだったよ? さっきは言いすぎたし、それで謝るために移動したのに、どうしてこんな嘘をつくの?」


腰に手を当てて説教を始める梓だが、厚彦は梓の声が聞こえていないようだ。
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