Romantic Mistake!

「おはよう、麻織さん。よく眠れた?」

朝から眼福だ。クリーム色のトレンチコートに黒のボトムスを着こなした上品な私服姿の颯介さんが、ゲストルームの入口に迎えに来ていた。まだ夢見心地でいたのに、引き続き格好いい彼を目の前にすると緊張で目が覚める。うなずき、彼の手を取った。颯介さんは実に自然に、手を繋ぎ、腕を組んでくれる。

エスコートされながら多目的ルームというレジデンス内の謎の個室に連れられ、彼はそこで持っていた黒い紙袋からなにかを取り出す。

「コートがないままだよね。簡単なものを用意したから、新しいものを買うまで着ていてもらえるかな」

「えっ」

彼に手渡された白いコートはしっかりとした生地で、私のものとはまるで手触りが違う。畳まれていたのにいっさいシワになっておらず、おそらく形状記憶が施されている。

ロゴを見てみる。銀座のブティック街のガラス越しでしか見たことのない、高級ブランドだ。

「颯介さん、こんなに高価なもの着れませんよっ」

「え? 気に入らなかった?」

そうじゃなくて!
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