アオハルの続きは、大人のキスから


「とにかく今日は逃げ出さない。謝罪は必ずする……うん、必ずする」

 何度も自分に言い聞かせるように呟きつつ足を進めようとするのだが、その足取りは大変重い。

 指定時間と部屋番号をすでに聞いている身としては、そのまま直接向かうべきなのだろう。

 わかってはいるのだが、誰かについてきてもらいたい。二人きりにしないでほしいと願ってしまう。

 とはいえ、過去のあれこれを聞かれるのは勘弁したいので、やはり小鈴一人で向かうしかないのだが……

 昨夜訪れた久遠の部屋の前には、すでに五分は立ち尽くしている状態だ。ウロウロして部屋の扉の前にいる着物姿の女。不審すぎるだろう。

 何度かチャイムを押そうと努力はしているものの、その指先がチャイムに触れることはなかった。

 自分の意気地のなさに項垂れていると、背後からクスクスという笑い声が聞こえてくる。

 小鈴の奇行を見ていた人物がいたのだろうか。通報されては困ると恥ずかしさに耐えて振り向くと、久遠が通路の壁に寄りかかって腕組みをしていた。

「久遠さん!」

「いつになったら俺の部屋に入るつもりだ? 小鈴」

「えっと、いつからそこに?」

 質問には答えずに問いかけると、彼は意地悪な笑みを浮かべた。


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