アオハルの続きは、大人のキスから


 久遠はロックを解除したのち、「どうぞ」と小鈴に部屋へと入るように促してくる。

 本当は逃げ出したい。だが、久遠には十年前のことを謝りたいと思っていたのだ。
 この機会を逃せば、一生言えなくなってしまう。

 小鈴は意を決して、久遠が住むスイートルームへと入る。

 昨夜も緊張したが、今夜はその比ではない。心臓がドキドキしすぎて苦しいほどなのに、久遠は昨夜の話など忘れたように自然体だ。
 
 肩透かしを食らって目を瞬かせていると、久遠にソファーに座るように言われる。

 彼に言われるがままソファーに腰掛けると、コーヒーを差し出してくれた。さすがはホテルマンと言うべきか。所業が流れるようで美しい。

「小鈴は、ミルクと砂糖一つだったか?」

「あ、はい」

「そうか。昔と変わっていないな」

「あ……」

 久遠と付き合っていた頃、彼の部屋へと行ったときにこうしてコーヒーを出してもらったことがあった。そのときも、ミルクに砂糖一つとお願いしたと思う。

 それを思い出して感傷に浸っていると、久遠自らミルクと砂糖を入れてティースプーンでかき混ぜ始めた。

「久遠さん、自分でやります」

「ん? 昔もこうして俺がやっていただろう? お姫様」

「昔は昔、今は今です。それに、お姫様って……」

 恥ずかしくなって、小鈴は言葉を濁す。

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