アオハルの続きは、大人のキスから


「やっぱり帰したくない」

「……用事があるんですよね? 久遠さん」

「わかっている。だけど、今はまだ俺は蘭久遠だ。このホテルのGMじゃない。駄々をこねたっていいだろう?」

「ふふ」

 大人の魅力を見せてきたかと思ったら、こんなふうに甘えてくるなんて。小鈴の気持ちをどれだけ刺激すれば気が済むのだろうか。

 名残惜しいが、彼には時間がない。それは久遠にだってわかっているはずだ。

「じゃあ、また」

「ああ。また、連絡する」

「はい」

 お互い手を振り、違うエレベーターに乗り込む。彼はこのまま自分の部屋に戻り、用事を済ませにいくのだろう。

 小鈴は久遠と別れてベリーヒルズビルの一階に降り立ったのだが、久遠に渡そうと思っていた資料がカバンの中に入っていることを思い出す。

 白無垢の柄などのサンプルが入っている資料だ。今後のために、勉強しておきたいからと久遠から頼まれていたものである。

 小鈴は急いで引き返し、エレベーターで四十九階にあるベリーコンチネンタルホテルへと向かう。
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