極上御曹司に初めてを捧ぐ~今夜も君を手放せない~
『でも、絶対にお父さんだった』
そんな私と父のやり取りを静観していた兄が突然箸を置いて席を立ち、私の手を掴んだ。
『梨乃、ちょっとおいで』
無理矢理椅子から立たされて、そのまま二階の兄の部屋に連れて行かれる。
『お兄ちゃん、まだ食事途中だよ』
訳がわからなくてそう言ったら、兄は少し屈んで私の両肩に手を置いた。
『梨乃、今は父さんと母さんをふたりきりにさせてあげよう』
兄の話の意図が理解出来ず首を傾げた。
『どうして?』
『多分、これから大事な話をするからさ。父さんは浮気してる。浮気ってわかるだろ?』
『うん。お母さん以外の人と付き合うことでしょう?』
『そうだよ。父さんは母さん以外の女の人とホテルに入って一緒に時間を過ごしたんだ。お前はそれを目撃した訳』
兄は淡々とした口調で解説する。
恐らく兄は父の浮気のことを前から知っていたのだろう。
全く驚いていなかった。
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