Zircan
サミュアは裏切られたと思っているのだろうか

「大丈夫だよ、直接言われた訳ではないんだから。その二人も何か理由があって言ったのかもしれないよ」

青年は元気を出してもらおうとしているのか、それとも何か他の理由があるのか励ましの言葉を言う
だがサミュアはそんな励ましだけで今の不安がなくなってしまうはずがない
一度考えてしまったらその考えはなかなか消えてはくれない
むしろ考えすぎてどんどんマイナスな方に行ってしまっている

「そんな訳ないよ。私はいつもみんなの足を引っ張ってしまっているからうんざりしているんだよ」
「駄目だよ、そんなふうに考えたら。良いように考えようよ。例えば君が居ると分かっていたから驚かせようと冗談を言っていたとか」
「でも・・・」
「そんなに心配だったら俺と一緒に来る?俺の仲間も歓迎してくれると思うよ」
「あなたは何をしている人なの?」
「自由気ままに仲間たちと旅をしているんだ。世界中を見て回るのが幼い頃からの夢だったからね」

サミュアはそんな彼の優しい言葉に釣られそうになっていた
だが最後の言葉を聞いた瞬間、今まで話していたことが嘘のように空気が冷たくなったような気がした
気が小さいと言っても感は鋭い方だ
何故だか嘘で塗り固められたような言葉だと思った
笑顔のままだが目が笑っていないような気がする
直感的に着いていってはダメだと思った

「どうする?」
「やっ、やめておきます。迷惑になると思うし」
「遠慮することはないよ。俺は大勢の方が楽しいからね」
「いえ、でも・・・」

少し強引に来る青年に体が怯え始めた
路地裏へ入ってきた道は青年が塞がっていて出られず、反対の方向に後退りをしてしまう
逃げようとしていると思ったのか青年はサミュアの腕を掴む

「はっ離して下さい」
「落ち着いて」

青年は腕を離そうとしない
サミュアが必死で抵抗していた時だった
青年の後ろから聞き慣れた声が聞こえた

「俺の仲間に何してんだ」
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