千歌夏様‥あなたにだけです。〜専属執事のタロくん〜
「‥北條さん」

「‥はい?」

入江くんが私の頭を優しく押さえながらゆっくりと視線を私に合わせる。 

入江くんの顔を初めて真正面から見た。
彼は色が白くて睫毛も長いなかなかの美男子だった。
彼は‥髪型が少し個性的で金髪に染めている。
今までこの髪色しか目に入らなかった‥
怖い人‥私とは違うと決めつけていた。
確か‥彼とは中等部の時に一度同じクラスになったことがあった。
話すのは今日が初めて‥。
彼が、こんなに介抱するのが上手で‥赤の他人の世話を焼いてくれる人だとは露ほども知らなかった。

「‥俺も同じだから‥」

「‥‥‥‥‥‥‥?」

「役員なんてやりたくないけどさ、たまには誰かの役に立つのもいいかなって‥だから、書記なんて柄じゃないけど、やってみようかなって‥
だから‥北條さんも一緒に頑張ろうよ‥。」

一緒に頑張ろうよ‥

一緒に‥

ホワン‥ホワン‥

何だか‥不思議な感覚‥
頭の中に光が駆け巡る‥
こんな風に言われた事初めて‥。
素直に嬉しい‥

私は入江くんの目をじっと見つめながらハッキリと言った‥。

「‥はい‥」

その瞬間‥
私は嬉しさの余り‥笑っていた。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥っっっ」

私の目の前に映る彼が目をまるくして固まっている。

えっ‥
私‥何か‥変だったかしら?
鼻血‥また出てるのかしら?

「あ、あの‥何か変かな?」

勇気を出して彼に声をかける‥。

「あっ、ごめん‥何でもない‥っ。」

「‥あ、そう‥なんですか」

ホッ‥
変じゃないならよかった。

「いや、やっぱ‥何でもなくない。」

えっっ!
ガーンッッ‥
どうしようっっ‥

「‥何か」

何か‥??

「北條さん‥
やっぱ‥かわいい‥。」

かわいい?!

「えっっ!嘘です!そんな‥っっ」

私は‥ブスです‥っっ!

「笑うと天使に見える‥」

て‥天使??!

もう、許して‥
いやがらせ?
すみません‥
もう二度と笑いませんから‥
ごめんなさいっっ‥

「‥あ‥もう‥本当に‥」

泣きたくなってくる‥

ポロポロ‥

「えっ、何で‥泣いて‥るの?」
入江くんが驚いた顔をしている。
いじめられっ子だった癖が抜けないのです‥

ポロポロ‥

「ごめんなさい‥見ないで‥」
泣きたくないのに‥
そう言って顔を隠そうとした時‥

グイッッ‥

急に入江くんが私の手首を掴む‥

「きゃっっ‥」

ドンッ‥

私はなぜか‥保健室のベッドに押し倒された状態になってしまい‥
えっ‥何だか‥どうしましょう‥この状態‥マズイわ‥
入江くんは私の顔をじっと見つめて黙っている。

「あ‥あの‥入江くん‥」

ハッッ‥

「あ、ごめんっ‥つい‥」

慌てて入江くんがやっと私から離れてくれた。

つい?‥何?

「あのさ‥北條さん‥」

「‥はい」

「あまり‥人前で泣かない方がいいよ‥」

「あ、はい‥」

ごめんなさい‥泣くなんてみっともないですね。

「泣くなら‥俺の前とかなら大丈夫だから‥」

え?

「入江くんの?‥ご迷惑じゃ‥」

「迷惑なんかじゃないよ‥とにかく他の男子の前はやめたほうがいい‥」

「は‥はい」 

入江くん‥どういう事?
でも、いい意味なんだよね?
少し‥胸が温かくなります。

「あ‥鼻血大丈夫そうだ‥」

「本当だ‥よかったわ」

そう言って笑って入江くんを見上げると彼は私の顔に手を伸ばそうとしていた。

「‥‥‥‥‥‥?」

その瞬間‥

ガラッ

「北條‥っっっ!!」

勢いよく入ってきたタロくんは、さっきの私の様に顔面蒼白だった。








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