千歌夏様‥あなたにだけです。〜専属執事のタロくん〜
千歌夏様‥私は嘘をついています。
「北條‥次は移動教室だよ。」

後ろから聞き慣れた優しい声がする。
振り返ると、タロくんが教科書を片手に爽やかな笑顔を向けていた。

「あっ‥そうだわ、移動しないとならないんだった‥っっ。」

うっかりしていた私は慌てて教科書を探す。

‥あら‥?教科書‥ないわ‥確か今日の朝、用意したはずなのに‥っっ。
私が机の中を探しているうちに教室には私達だけになってしまった‥。 
もうすぐチャイムが鳴ってしまう‥。

「どうしましょう‥ない‥わ」

仕方ない‥もう少し探してなかったら‥先生に言わないと‥
でも‥この先生、とても厳しいのよね‥
何て言われるか‥
はぁ‥
でも‥仕方のない事‥叱られるのは慣れてるが‥少し重い気分でタロくんを見上げた。

「‥タロくん‥先に行ってて‥私‥もう少し教科書を探すわ‥」

そう言ってタロくんを見ると彼はいつの間にか私のロッカーの所に立って私を見ていた。

「‥タロくん?」

「千歌夏‥様、こちらを開けてもよろしいですか?」

タロくんがいつもの口調にもどっている。

「‥え‥ええ‥いいわ‥でも、なぜ?」

でもねタロくん‥
多分‥そこには入ってないわ‥

ガチャ‥

「‥あっ!」

「え?」

「千歌夏様‥これではないですか?」

そう言ってタロくんは私の手に教科書を持たせた。

「え‥」

これって‥

私の手に持たされたのはタロくんの教科書だった。

「タロ‥くん、これ‥違う」

私がタロくんに返そうとすると、タロくんは満面の笑顔を向けてくる。

「私の物は千歌夏様の物ですから‥」

「‥え‥?」

タロくんの物は私の物?
それって‥どういう事?

「‥では、行きましょう‥」

タロくんはゆっくりドアまで歩き始める‥

っ‥タロ‥くん‥

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