呪イノ少女、鬼ノ少女
真っ暗な屋敷で、九音は一人真剣な顔つきで天井を見上げていた。


もちろん明かりが無いため、普通の人間ならば真っ暗な暗闇しか見えないだろう。



だが、九音には天井の木目の一つ一つがはっきりと見えていた。


「困った」


九音は、かなり苛立っていた。

それはもう、今すぐ屋敷の中で暴れ回りたいくらいに。


「こんな時に出るなんて。全く神なんてものがいるのなら、呪い殺してやりたい」


実際、九音はかなり追い込まれていた。

果たして今の自分に『鬼』を封じる力が残っているか。


いつも傲岸不遜な九音も、今は自分の力に自信が持てなかった。


「っ…く…」


また、いつものだ。


最近は力を使わなくても、発作が酷くなって来ていた。


「はぁ…はぁ、澪」


九音は苦痛を紛らわせるために、昼間の事を思い出していた。


『寂しいですよね』


澪のあの言葉がやけに耳の奥に響いている。


「やっぱり…一人は…っ、寂しいわね」


本当は昼間は強がってみせただけだった。


確かに澪に出会うまでは、一人を寂しいなどと思うことなんて一度も無かった。


だが澪に出会って変わってしまった。

今こうして会えないでいるのが、たまらなく辛い。


会えば会うほどに、離れている時間がだんだんと辛くなっていく。


一分一秒でも早く会いたい。


一分一秒でも長くあの笑顔を見ていたい。



「澪に、会いたい…っ…」




側にいる、そう言ってくれた澪を思いながら、九音はたった一人―――終りなき苦痛と闘うのだった。









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