もうこれ以上、許さない
そんなふうにマスターからも、それに誉からも風人からも…
あたしにはもったいないくらいの気持ちを、たくさんもらった。

なのに何も返せなくて、心苦しいけど…
せめてその気持ちを無駄にしないように、もう「あたしなんか」とは思わないようにしていた。
そして、その気持ちに恥じない生き方をしようと心がけてた。


そこで、目的地に到着して…
心地よい海風が吹き抜ける。

そうそこは、風人と出会った海で…
防波堤に立つと、勢いを増した風が暑さを吹き飛ばしていった。


遭遇するわけにはいかないのに、散歩してここに来てしまうのは…
本音は会いたくてたまらないからだろう。
出来る事ならあの日に戻って、もう一度出会いたいからだろう。

だけど、たとえ二度と会えなくても…
あたしはずうっと風人が大好きだし。

一晩中キスしたあの夜に、あたしたちの幸せが詰まってるから…
そこに永遠があるから。
それを糧に頑張ってきたし、これからも頑張れると思う。

風人も頑張ってるかな?
今ごろ育児に奮闘してるかな?
きっと風人の事だから、いいパパになってるだろうなぁ…
思わず想像して。
心が割れそうになって、涙が滲んだ。
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