もうこれ以上、許さない
「はあ?お前、俺の月奈ちゃん酔わせて何する気だよ」
と心配するマスターは、あたしたちがセフレ関係なのを知らない。

「…ほんとだよっ。
まぁ酔っても何も起きないけど、クーニャンに変更で〜」

「俺には甘えて欲しかったのに…」

そのために強いカクテルの力を借りようと思ったのか、弱いカクテルへの変更に頬杖をついて拗ねる誉。

普段クールな人の可愛いギャップに、思わず胸がキュンとなる。
だけど笑って誤魔化した。


そんなの付き合うためとか抱くためとか、目的のための常套句じゃん。
そのうち受け止めきれなくなるくせに…

でもふと気付く。
誰とも付き合う気がなくて、抱く目的も果たしてる誉には…
堂々とセフレを申し込む、自分をよく見せようしない誉には…
そんな甘い言葉で釣る必要がない。

だとしたら、本心?
何気に顔を覗くと。

「ん?」
優しい声音で、切なげに見つめ返されて…

またしても胸が高鳴る。


うん、そうやって心を誉でいっぱいにすればいい。
そしたらきっと、風人と接しても普通でいられるはずだから…

「…ううん。
でもね誉、今日来てよかった。
誘ってくれてありがとう」

そう言うと誉の顔は、すごく嬉しそうに綻んだ。



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