もうこれ以上、許さない
そんなある日。

「Yシャツ13点ですね〜。
お急ぎですか?」

「はい、出来るだけ早く」

「では、明日の17時以降でよろしいですか?」

「えっ、今日出来ないんですかっ?」

「はい、当日仕上げの受付は11時までなので…」
困るならこんなに溜め込まないで〜。


渋々了承したお客様を見送ったあと、その大量のYシャツを処理する。

タグ付けや破れ等のチェックはもちろん。
うちの店はサービスで、Yシャツのボタンが取れてたら仮ボタンを付けてあげるのだ。


だけど、13枚も溜め込むような人だから…

「もーお、どんだけ取れてんの〜」
昼ごはんがお預け状態で、お腹が空いてつい愚痴が出る。 

しかも、まだ仮ボタン付けが終わってないのに…
出入り口の開く音がして、次のお客様が来店した様子。

「いらっしゃいませ〜」
得意の営業スマイルで顔を上げた、瞬間。

心臓が、肺が、身体が、停止する。


目の前に、4年前に別れた菊川風人(きくかわかざと)がいたからだ。


う、そ…
なんでここに?
目を大きくして固まるあたしに…

「え…
俺なんか付いてます?
まさか憑いてますっ?」
緊迫感も束の間、そう肩の上を指差す風人。
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