もうこれ以上、許さない
誰にも心を許さないって決めたけど…
マスターはまるで、お兄ちゃんみたいで。
妹の珠和と合わせて、この兄妹だけは心を許せる存在だと思った。



そうして、心が少し穏やかになった数日後。

その日もいつものように、風人の受付をしていると。


「あの、すみません。
こちらお布団も洗えるのかしら?」
初老のご婦人が出入り口からそう声掛けてきた。

「はいっ。
素材にもよりますが、一般的なものでしたらお預かりしてますよ?」

「一般的なものって、どんなものかしら?
綿の敷布団は大丈夫?羽毛は無理かしらね…」

長くなると思ったあたしは、先に風人の受付を済まそうと。
「すみません、」少々お待ちいただけますか?と、続けようとした矢先。

「先に聞いたげて?」
風人に小声で遮られる。

断ったら押し問答になると判断したあたしは、小さく会釈を返して。

「綿や羽毛なら基本は大丈夫ですが、状態にもよるので見せていただいてもよろしいですか?」と答えた。

「じゃあ持ってきます。
あ、でも羽毛はコインランドリーでも洗えるかしらね?」

やっぱり長くなるか…
そう、お布団は洗う機会が少ないため、色々質問される事が多いのだ。
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