雨の巫女は龍王の初恋に舞う
「璃鈴様……?」

 おそるおそるのぞきこんだ寝床の中に、璃鈴の姿がない。手を触れればひんやりと冷たく、もうかなり前に璃鈴が床を離れたことがわかった。

 不安になって秋華があたりを見回すと、庭へ続く扉が開いている。急いで外に出た秋華は、意外な光景を目にして、思わず微笑んだ。


「まあ」

 咲きほこる桃の木の根元に、璃鈴と龍宗が二人、幹にもたれて寄り添い眠っていた。

 とても、穏やかな表情で。
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