雨の巫女は龍王の初恋に舞う
「幼く見えても、皇后様はご自分の責任を簡単に放棄する方ではありません。ましてや、手を伸ばしてきた相手に対して、その手をご自分の方からはらうことなど」

 決意を秘めた璃鈴の横顔を思い出しながら、飛燕は微笑んだ。その様子を見て、龍宗は半眼になる。


「なぜ、それほど璃鈴の性格について詳しいのだ」

「ですから、巫女の里からこちらへ来る間に……」

「やらんぞ」

「はい?」

 龍宗は、手元の書類に視線を落として言った。

「たとえお前でも、璃鈴はやらん」

 それだけ言って仕事を続けている龍宗に、飛燕はきょとんと目を丸くした。そして、ほころぶように、笑った。
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