雨の巫女は龍王の初恋に舞う
 龍宗が生まれて四年後、飛燕が生まれた。飛燕が生後半年の時に、妃たちによる毒殺事件が起こる。二人は皇后の機転であやういところで助かったが、危険を感じた皇帝の判断で、飛燕だけはその場で死んだことにしてこっそりと後宮を出された。そして余揮の養子として育てられ、長じては皇帝の側近として龍宗の側で過ごしてきたのだ。

 龍宗に子のない今、飛燕は、まぎれもなく輝加国の皇太子だった。

「そうだったのですか」

「陛下と来家の一部以外は、誰も知らない話です。ですから、ここだけの話にしておいてください」

「はい」

「秋華殿」

 余揮が硬い声を出した。

「あなたは、周尚書とつながっていましたな」

 秋華は顔をこわばらせる。
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