雨の巫女は龍王の初恋に舞う
第七章 新しい侍女
 ふ、と璃鈴は目を開いた。

 あたりは暗闇だ。

 目を開いているのか閉じているのかもわからない暗闇の中で、璃鈴はただぼんやりとしていた。意識がもうろうとしていて、何も考えることができない。なにかとても大事なことを言い忘れているような気がする。


(私、なんでこんなところにいるのかしら)

 身体中がだるく、ひどく眠かった。もう一度目を閉じようとした時、目の前にぼうっと光る何かが現れた。暗闇に慣れた目にはわずかな光も眩しく、璃鈴は目を細めてその光を見つめる。それはどうやら人らしく、音もなく璃鈴に近づいて来る。すぐ目の前までくると、その人は璃鈴に話しかけてきた。


「毒は、宮城の薬師によって中和されました。もう大丈夫ですよ」

 璃鈴は一生懸命その人影をみつめるが、明るい光を背にしたその人物の顔はよく見えない。かろうじて、優しい声と柔らかな雰囲気から女性であることがわかるだけだ。
< 276 / 313 >

この作品をシェア

pagetop