雨の巫女は龍王の初恋に舞う
「龍宗 さま……」

 声がかすれて、うまくしゃべれない。眉を寄せた璃鈴に、それでも龍宗は、ほ、とした表情になった。

「よかった……目が、覚めたな」

「私は……」

「覚えているか? お前は毒を飲んだんだ」

 言われて、記憶が戻ってきた。


(そうだ。伝雲たちが部屋に来て……お茶に、毒が入ってるって……)


 自分は、そのお茶を飲みほしたのだ。璃鈴は、自分の手を握っていた龍宗の手を握り返す。その感触で、これが夢ではないことを実感した。 

「本当に毒が入っていたのですね。……よかった。生きてる」

「当たり前だ。死んでたまるか」

 璃鈴が無事なのを確認して、龍宗は大きく息を吐いて肩を落とした。が、すぐに顔をあげると眉をつりあげる。
< 278 / 313 >

この作品をシェア

pagetop