雨の巫女は龍王の初恋に舞う
 その場にいる官吏を含めた男性の中では格段に若い方だというのに、彼の持つ風格は里の長老に優るとも劣らない。ただ座っているだけなのに、その姿からは威圧する風のようなものすら感じる。第一、龍宗ほどに鍛え上げられた体躯の持ち主を、璃鈴は見たことがなかった。


(そして、綺麗な人)

 絡み合った視線の強さを、璃鈴は真正面から受け止めた。

 龍宗のすべてが、おだやかな里の中で生きてきた璃鈴が初めて目にする激しさを持っていた。それを璃鈴は、美しいと思った。


 龍宗が立ち上がった。あたりが緊張する中、無言で背を向けて、そのままもう振り返ることなくその場をあとにする。周りに座っていた官吏たちも、あわてて席を立ってあとを追った。

「大儀であった。龍宗皇帝もそなたたちの舞を楽しまれたようだ。これからも国のためにつくすように」

 龍宗の後ろにいた若い官吏はそう言うと、自分も龍宗の後を追った。


 璃鈴は、その強烈な意思を持った瞳をいつまでも忘れることができなかった。

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