雨の巫女は龍王の初恋に舞う
「やること……ですか」

 一人で体操を始めた璃鈴を見ながら、秋華は苦笑して言った。

「では、刺繍など、いかがですか?」

「そういうのじゃなくて。もっとこう……わくわくするというか……」

「陛下に歌などお読みになっては?」

「えー……」

 わざと璃鈴の意図を外して答える秋華に、璃鈴はふてくされた顔をする。

 だが、周りの雰囲気に気づいていない様子の璃鈴に、秋華は安堵した。



 璃鈴は気づいていないが、新婚の妻のもとに夫がおとずれたのが初夜のたった一晩きりということで、まわりの女官たちの璃鈴を見る目がどことなくそらぞらしくなってきていた。

 たとえ皇后といえど、陛下の寵愛を得られないならこの後宮ではなんの力も持てないただの小娘だ。
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