サンタクロースに恋をした
「……好きだよ」
「そう、ですか……」
「でも……安心して、僕は君たち2人の邪魔はしない。那美ちゃんは君といると笑っていて幸せそうだ。それを壊すことはしないよ」

 俺と一緒だ。あいつのことを考えている。

 でも本当に先輩の選択は正しいのか? あいつは先輩が好きで、2人は思い合っていて。

 いや、先輩がどうかじゃない。俺が手を離さないのが多分、2人を苦しめている。いつか、そう遠くもない未来にもしかしたら、平川の隣にいるのは俺じゃないかもしれない。

「だから、ちゃんと見ててよ、那美ちゃんのこと。彼女は安藤くんが好きだよ。僕じゃなくて、安藤くんを選んだんだから」
「先輩……」

 俺は何を考えていたんだ。弱気になって、勝手に1人で失恋した気になって、そうやって自分を守ろうとしていた。もしフラれても傷付かないように。

「先輩はどうして2年前のクリスマス、平川にハンカチをあげたんですか?」
「……明確な理由はないな……、ただ、彼女のことを放っておけないと直感した。それだけだよ」
「そうなんですね」
「うん」

 先輩が何を考えているのかはいまいち読めないけど、平川のことを本当に好きだということだけは伝わってきた。

 俺も負けてられない、先輩の思いよりもももっと強くあいつを好きでいようと、心に誓った。
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